血液凝固系検査
血液が固まりやすい体質(血栓性素因)は、胎盤の微小血管に血栓を形成し、胎児への血流を障害することで流産や死産の原因となります。当院では凝固制御に関わる3つの因子を精査し、血栓性素因の有無を評価します。
血液凝固異常と不育症の関係
妊娠中は生理的に血液が固まりやすい状態(過凝固状態)になります。これは分娩時の出血に備えた正常な反応ですが、もともと血栓性素因を持つ方では凝固のバランスが過度に傾き、胎盤の絨毛間腔に微小血栓が形成されます。
その結果、胎児への酸素や栄養の供給が不足し、流産・死産・胎児発育不全・妊娠高血圧症候群などのリスクが上昇します。血液凝固系の検査で異常が見つかった場合は、抗凝固療法により妊娠予後を大きく改善できる可能性があります。
プロテインS活性
プロテインSは、血液凝固を抑制する天然の抗凝固因子です。活性化プロテインC(APC)の補因子として働き、凝固因子Va・VIIIaを不活化することで過剰な血液凝固を防いでいます。
プロテインSの活性が低下すると、血液凝固の抑制機能が弱まり、血栓が形成されやすくなります。日本人では先天性プロテインS欠乏症の頻度が欧米より高く、不育症の原因として特に重要視されています。妊娠中は生理的にプロテインS活性が低下するため、非妊娠時の測定が重要です。
プロテインC活性
プロテインCは、トロンビンによって活性化される血液凝固制御因子です。活性化プロテインC(APC)として凝固因子Va・VIIIaを分解し、血液凝固のカスケードにブレーキをかける重要な役割を担っています。
プロテインC活性が低下している場合、プロテインS欠乏症と同様に血栓形成リスクが上昇します。先天性の欠乏症は比較的まれですが、不育症のスクリーニングとしてプロテインSとセットで検査することが推奨されています。
第XII因子(第12因子)活性
第XII因子(ハーゲマン因子)は、血液凝固の内因系経路の最初のステップに関与する凝固因子です。一般的な凝固検査ではAPTTの延長として検出されることがありますが、出血傾向ではなくむしろ血栓傾向と関連するという特殊な性質を持っています。
第XII因子活性の低下は不育症との関連が報告されており、特に日本人の不育症患者さんでは一定の頻度で認められます。線溶系(血栓を溶かす仕組み)の活性化にも関与しているため、低下すると胎盤の微小血栓が除去されにくくなると考えられています。
検査項目の比較
| 検査項目 | 役割 | 低下時のリスク | 日本人の頻度 |
|---|---|---|---|
| プロテインS | APCの補因子として凝固を抑制 | 血栓形成リスク上昇 | 比較的高い |
| プロテインC | 凝固因子Va/VIIIaを分解 | 血栓形成リスク上昇 | 比較的まれ |
| 第XII因子 | 内因系凝固経路の開始+線溶系活性化 | 微小血栓の残存 | 一定頻度で認められる |
異常が見つかった場合の治療
低用量アスピリン
血小板の凝集を抑制し、胎盤への血流を維持します。妊娠前〜妊娠28週頃まで服用を継続するのが一般的です。
ヘパリン自己注射
凝固因子の活性を直接抑制する抗凝固薬です。プロテインS・C欠乏症で血栓リスクが高い場合に、低用量アスピリンと併用します。
経過観察と管理
軽度の異常値の場合は、妊娠後の凝固機能モニタリングを行いながら、必要に応じて治療を開始する方針をとることもあります。
このような方に検査をおすすめします
費用の目安
血液凝固系検査は保険適用で実施可能な項目が多くあります。
※ 保険適用(3割負担)の目安です。他の検査と同時に実施する場合の費用は診察時にご説明いたします。