免疫系検査
不育症の原因として最も頻度が高いのが免疫系の異常です。自己抗体の産生やT細胞のバランス異常が、胎盤の血流障害や胎児への免疫学的拒絶を引き起こし、流産につながることがあります。当院では3つの観点から包括的に精査します。
抗核抗体(ANA)
抗核抗体は、自分自身の細胞の核に対して産生される自己抗体です。高値の場合、胎盤の形成や機能に影響を及ぼし、流産のリスクが上昇する可能性があります。
血液検査で測定し、蛍光抗体法(IF法)で抗体価と染色パターン(均質型・斑紋型・核小体型など)を評価します。パターンによって関連する疾患や臨床的意義が異なるため、結果を総合的に判断します。
抗リン脂質抗体
抗リン脂質抗体は、細胞膜のリン脂質に対して産生される自己抗体群の総称です。これらの抗体が存在すると、胎盤の血管内に微小な血栓が形成されやすくなり、胎児への血流が障害されて流産や死産を引き起こします。抗リン脂質抗体症候群(APS)は不育症の最も重要な原因の一つであり、治療により妊娠予後を大きく改善できます。
当院では以下の6項目を網羅的に検査し、抗リン脂質抗体症候群の確実な診断を目指します。
抗リン脂質抗体症候群の確定診断には、12週間以上の間隔をあけた2回の検査で陽性が確認される必要があります(シドニー改訂札幌基準)。当院では初回検査で陽性が出た場合、適切なタイミングで再検査を行い、確実な診断につなげます。
T細胞系の異常
妊娠の維持にはTh1(攻撃型)とTh2(寛容型)のバランスが重要です。Th1が優位な状態では、胎児を異物と認識して免疫学的拒絶が起こりやすくなります。また、NK細胞の活性が過剰に高い場合も、胎盤への攻撃により流産リスクが上昇します。
ヘルパーT細胞バランス
血液中のTh1細胞とTh2細胞の比率をフローサイトメトリーで測定します。Th1優位の場合、免疫抑制療法(タクロリムスなど)の適応を検討します。
NK細胞活性
ナチュラルキラー細胞の殺傷能力を測定します。活性が過剰に高い場合、子宮内膜や胎盤のトロホブラスト(絨毛細胞)への攻撃が起こり、着床障害や流産の原因となります。
異常が見つかった場合の治療
低用量アスピリン
抗リン脂質抗体陽性の場合に使用。血小板の凝集を抑制し、胎盤への血流を維持します。妊娠前から服用を開始します。
ヘパリン療法
APSと診断された場合、低用量アスピリンに加えてヘパリン自己注射を併用。微小血栓の形成を強力に防ぎます。
免疫抑制療法
Th1/Th2比が高値やNK細胞活性が過剰な場合、タクロリムスなどの免疫抑制剤の使用を検討します。
このような方に検査をおすすめします
費用の目安
免疫系検査の多くは自費診療となります。一部の検査は保険適用で実施可能です。
※ 費用は目安です。保険適用の可否は検査項目や状況により異なります。詳しくは診察時にご説明いたします。